即身成仏記

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心に花を



夜、仕事の帰りに自分の駅のすぐ手前で電車が静かに止まる。
人の少ない車内は静まり返った。
俺は朔太郎を読んでいたが、目を上げて窓の外を見ると見慣れたマンションの灯りが見えた。
多分その駅で降りるような身なりのよい初老のおっさんが、「なんだよー」とかぶつぶつ言うのがよく響いた。
そして(先頭車両なので)真っ暗な運転席を覗き込んだりしている。
俺はそのおっさんをなんとなく見ている。
ちょっと飲んでいるのか、ぶつぶつうろうろしている。
少ししてボソボソと車内放送。
後半、新幹線が隣を通り過ぎたせいでほとんど聞こえなかったけど長くは止まらなそう。
俺は相変わらずうろうろしているおっさんを見ている。
何故かというとおっさんは立派な風格のある顔をしていて、頭がちょっと禿げてるのも白髪と共にかっこ悪くない。背広も品がある。
なのにみっともなくうろうろし、今携帯電話をかけはじめた。

ああ、俺だけど。
今駅の手前で電車止まっちゃってさ。
5分くらいしたら帰る。
はい、はい、うん。
そんじゃ。

よく聞こえた。
ああ、おっさん。5分だったら別に電話しなくてもいいだろう。
そんな立派な風貌をしているのに。
帰るってことは別に迎えにきているんでもないだろうし、
降りるつもりで立ったんだろうけど、ちょっと座ったらどうだ。
泰然としようよ。
見苦しい。
だから、おっさんは嫌いだ。
ああいうふうには、なりたくないな。

ほどなく電車は動き始め、駅に着いた。
おっさんはすぐに降りて行き、俺は泰然と立ち上がって家路についた。
そして歩きながら思った。

偉そうなのは、どっちだ。
お前はいったい、何を知っているんだ。
あのおっさんが、五年ぶりに、いや二週間でも、五日でもいい。
長い旅から帰ってきて、一刻でも早く我が家に帰りたいと望んでいる旅人でないと、なんで言えるのか。
懐かしい我が家にまさに辿り着こうとしたそのとき、何故か電車が止まってしまった。
その五分がどんなに長いか、寂しいか、焦がれるか。
そうじゃないだろうけど、そうかもしれないじゃないか。
そしてきっともっと他の何かなんだろう。
何も知らないのだ。
とかく夜はそういうことが起こりうる時間である。
物知り顔で、したり気分で、目に見えたことを見下して、いいつもりになるな。
自分の知ってることにばっかり当てはめて、思いたいようにだけ思って、ドラマを全部見落しちまうんだ。
批判と悪態を取り違えるな。
知らないロマンチックを知りたいならば。

心に花を。
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